亡くなった人から相続した土地や家を巡るルールが、今年から来年にかけて大きく変わります。今月からは、不要な土地を国が引き取る制度がスタート。来年4月には、不動産の名義人を書き換える「相続登記」が義務化されます。誰もが関わる可能性があり、正しく理解しておきたいものです。今回は、手続きの内容や注意点をまとめました。
今月27日から始まるのは「相続土地国庫帰属制度」です。土地を相続したものの、「管理に困る」「手放したい」というときに、国に引き渡すことができる制度です。これまでは「相続放棄」の手続きで土地や家、預貯金などを含めて全ての相続財産を手放すしかありませんでした。新制度では、土地だけを手放せるようになります。
ただし、どんな土地も引き取ってもらえるわけではありません。まず、相続や遺贈により取得した土地であることが大前提です。生前贈与された土地や、売買で取得した土地は対象になりません。
さらに、厳しい要件もあります。建物がある土地、境界が明らかでない土地などは申請段階で却下されます。また、一定の勾配・高さの崖がある▽放置車両や、定期的な伐採が必要な樹木がある▽地下に産業廃棄物や井戸がある…など、管理に多くの費用がかかる土地も認められません。
専門家は、引き渡せる土地として「主に耕作放棄地などが当てはまるのでは」と指摘。一方で、「管理に困っている土地があれば、要件を満たすかどうか、まず法務局や司法書士に相談してみるといい」と助言しています。
法務局に申請し、審査を経て承認された場合は、10年分の管理費にあたる負担金を支払う必要があります。金額は、一部の市街地を除いた宅地や田畑が原則20万円。森林は面積に応じて算定されます。
もう一つ、多くの人に関わるのが、相続登記の義務化です。こちらは来年4月から施行されます。相続登記とは、亡くなった人が所有していた土地や家の名義を、遺産を引き継いだ人(相続人)に変更する手続きです。
これまでは任意でしたが、長年にわたって名義人が変更されずに所有者が分からなくなり放置される空き家や土地が増加。今後は不動産の取得を知った日から原則3年以内に申請が必要になります。来年4月以降だけでなく、過去に相続した人も対象になり、2027年3月末までに申請しなければなりません。正当な理由なく登記をしないと、10万円以下の過料が科されます。
何世代も相続登記されていない不動産は、相続に関係する人が増え、所有者を特定したり、土地を処分したりすることが難しくなるケースも。登記の作業には時間やコストもかかります。専門家は「過去に相続した不動産や、将来的に相続するかもしれない不動産がある人は、登記簿で名義人を調べるなど、今のうちにできることをやった方がいい」と話します。
相続登記をせずに放置すると、権利関係が複雑になる可能性がある等のさまざまなリスクがあります。後々のトラブルを防ぐためにも、実態に即して登記の手続きを進めていきましょう。